「あんなものはマンガじゃない」 手塚治虫が石ノ森章太郎に謝罪した事件の顛末とは!?
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12月9日放送の『林修の痛快!生きざま大辞典』(TBS)では、マンガ家・石ノ森章太郎にフィーチャー。彼の作品に投影された人生観などに迫る中、石ノ森が影響を受けたという手塚治虫との関係もクローズアップされた。
『サイボーグ009』『仮面ライダー』『HOTEL』といった多彩なジャンルの作品を次々と世に送り出し、単行本計500巻770作品と「最も多くの作品を1人で描いたマンガ家」としてギネス世界記録に認定されている石ノ森。番組では著書『ボクはダ・ヴィンチになりたかった』(清流出版)、『絆 不肖の息子から不肖の息子たちへ』(鳥影社)の言葉を引用し、その生き方や考え方を紹介した。
レオナルド・ダ・ヴィンチになりたかった石ノ森は、多芸なダ・ヴィンチにあやかって、学生時代は音楽部、美術部、新聞部、文学部、柔道部の5つを掛け持ち。また、1カ月不眠不休で560枚の原稿を描いたという逸話や、「自分の才能の8割は体力である」というコメント、「収入のすべてを遊びに使う」というポリシーも取り上げられた。
そんな石ノ森は手塚の『新宝島』に衝撃を受け、マンガを描きはじめたという。石ノ森のデビュー作の『二級天使』と手塚作品のコマ割り、手塚の『鉄腕アトム』のキャラ・お茶の水博士と『サイボーグ009』に登場するギルモア博士を比べると類似している点があり、石ノ森が手塚の影響を受けていることも伺える。
また、石ノ森が描いたマンガを親交のあった手塚が否定する事件も取り上げられた。石ノ森が実験的な作品『ジュン』を連載していたところ、手塚がファンとの手紙のやりとりの中で「あんなものはマンガじゃない」と苦言を呈し、そのファンが石ノ森にそのまま伝えてしまったというのだ。手塚を尊敬する石ノ森はショックを受け、「すぐに(『ジュン』の)連載を打ち切りにしてほしい」と編集部に言ったほどだったとか。しかし、それを聞きつけた手塚は石ノ森の自宅を訪れ「自分でもなんであんなことをしたのかわかりません。本当に自分で自分が嫌になります。本当に申し訳ありませんでした」と謝罪をしたという。手塚の発言の真意は定かではないが、手塚は負けず嫌いで嫉妬深いことでも有名。諸星大二郎や水木しげるといったマンガ家たちの才能にも嫉妬し、大友克洋の絵を見たときには「これくらい僕にも描ける」と発言したという逸話を持っている。『ジュン』に対しても、手塚の中でそうした気持ちがあったのかもしれない。
手塚の死後、「僕らがヒットを生んだとしても、しょせん手塚治虫にはかなわないんだ。(中略)天才というのは、どこかいびつでしょう。僕らは凡庸だから、妙にバランスがとれてしまっている。そういう性格が作品にもあらわれてしまっている(後略)」とインタビューで答え、手塚の突き抜けた才能に及ばないことに触れた石ノ森。
しかし、一方で手塚に及ばないとしながらも、石ノ森は著書『ボクはダ・ヴィンチになりたかった』の中で、ダ・ヴィンチのような多才でバランスの取れた人間が現代には必要と語っており、稀代のヒットメーカーとしての矜持も持っていたことが伺える。
マンガやアニメだけでなく、映画やドラマにいたるまで数々の作品を生み出してきた石ノ森。しかし、どれだけヒットを生んでも神様・手塚治虫には及ばないと劣等感を抱いていたようだ。番組を通して、世間から見れば文句なしの天才でも、“マンガの神”とされる手塚の存在によって劣等感を持たざるを得なかった石ノ森の悲運が伝わってきたのではないだろうか。
http://otapol.jp/2014/12/post-2096.html
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