フランスで相次ぐアジア系襲撃 「アジア人は金持ち」の固定観念か
仏パリで行われた、張朝林さんが亡くなった事件に抗議する中国系住民によるデモ(2016年9月4日撮影)。(c)FRANCOIS GUILLOT/AFP
【AFP=時事】フランス・パリ郊外でミン(Ming)さん(41)は、バスから降りるときに覆面の男に襲われた。ハンドバッグをひったくられそうになり、抵抗すると、地面に押し倒されて殴られ、意識を失った。2か所を骨折し、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しんだ。仕事は3週間、休まざるを得なかった。
活動家らは、ミンさんが襲われたような事件を世間はあまり知らないが、アジア系フランス人を狙った暴力事件は相次いでおり、その理由は、人種差別的な固定観念とアジア人は皆「裕福な」観光客という思い込みによるものではないかと懸念している。
身元が分からないよう仮名で取材に応じたミンさんが襲われたのは、パリ南東部のバルドマルヌ(Val-de-Marne)県だ。男に襲われて失ったのは、金額にすると数十ユーロ分とIDカードが入っていたハンドバッグだ。だがそのことよりも、無力感と怒りがいつまでも消えず、立ち直れない。「なぜ私だったのか。現金も宝石も何も持っていなかったのに。なぜあんな暴力を?」
アジア系住民に対する襲撃が最初に注目を集めたのは2016年、パリ北部で紳士服店を営んでいた張朝林(Zhang Chaolin)さん(当時49)が襲われ、死亡する事件が起きたときだ。
2人の子どもの父親だった張さんは、パリ郊外のレストランに向かう途中、10代の若者たちに襲われ、死亡した。奪われたのは、携帯電話の充電器と菓子数個だけだった。犯人らは2018年に刑務所に入れられた。
被害者による裁判を支援しているバルドマルヌの団体「全ての人に安全を(Securite pour tous)」の広報担当者サンレイ・タン(Sun-Lay Tan)氏は、「私たちは、張さんが亡くなった事件についての問題は理解していたが、規模までは把握していなかった」と語る。
フランスでは人種別の統計が禁じられているため、こうした襲撃に関する公式のデータは存在しない。だが活動家らは、特定のパターンが見えてきたと指摘する。
■アジア人襲撃がゲームに
犠牲になるのは、たいてい女性や高齢者だ。通りで目を付けられ、後をつけられる。そして、人通りのない場所まで来て襲われる。
タンさんは、「狙われるのはアジア人だからだ」と言う。「『非力で、いつも現金を持ち歩き、自衛するすべを知らない』。こういったアジア人に対する固定観念が襲撃に関係している」
警察当局の記録によると、2018年5月からの1年間に114件の襲撃が起きており、これは3日に1件の発生頻度に相当する。事件が起きた場所の大半がバルドマルヌだ(注:仏語版では、この統計は首都パリと同地域圏の警察の記録)。
だが活動家らは、こうした問題はさらに広範囲で発生しているのではないかとして、当局はアジア人に対する人種差別を「放置」していると非難の声を上げている。
襲われた人の多くは、被害に遭ったことを通報しない。報復を恐れてか、または恥の意識、不法滞在が理由のこともある。
ロバート・ナ・チャンパーサック(Robert Na Champassak)さんは、自身が地域の団体「全ての人に安全を」に加わったのは、こうした襲撃に関する「タブーをなくす」ためだと話した。
ロバートさんの母親(当時64)は2017年にダンス教室に行く途中で襲われ、その18日後に脳卒中を起こして亡くなった。
医師らは襲撃と脳卒中との因果関係を示すことはなかったが、ロバートさんは、母親は、犯人らに襲われたことで健康を害したと信じて疑わない。「母は人生を楽しんでいた。それなのに、襲われてからは一歩も外へ出たがらなくなった。もうかつての母ではなくなった」
ある警察当局者は、アジア系の人々を襲うことがギャングの仲間に加わる「通過儀礼」になっている可能性があると指摘する。匿名を条件に取材に応じたこの当局者は、「いきがっている若者は、アジア人はいつも大金を持ち歩いていると思い込んでいる」と説明した。
「彼らにとっては、(アジア人襲撃は)ゲーム、賭けだ。だからこそ、時に暴力がエスカレートする」
一方で、フランス華人青年協会(AJCF)のレティシア・チブ(Laetitia Chhiv)会長は、「状況は改善している」と主張した。
有害な固定観念を打ち破ることを目標に、パリを中心とした地域圏の学校では実験的な啓発プロジェクトが近いうちに開始されることになっている。
【翻訳編集】AFPBB News
https://news.livedoor.com/article/detail/17689781/
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