「どこが悪い」「窃盗だ」 波紋広がる教諭の給食パン千個持ち帰り
堺市立堺高校定時制課程の生徒に給食として配られていたパンと牛乳
(産経新聞)
廃棄予定だったパンなど学校給食の残り31万円分を「もったいない」と自宅に持ち帰り続けていた堺市立堺高校定時制課程の60代の教諭を、市教委が減給3カ月の懲戒処分としたことがSNS(会員制交流サイト)などで波紋を広げている。市教委にも深刻化する食品ロスの問題の視点から「どこが悪いのか」「処分が重すぎる」と教員を擁護する声が多く寄せられる一方で、給食が公費で賄われていることから、処分は妥当とする意見も届けられている。市教委では残食を減らす仕組み作りや、残食の処分方法について検討を始めた。(古野英明、藤原由梨)
教諭は平成27年6月ごろから今年6月にかけ、廃棄予定だった給食の残りのパン約千個、牛乳約4200本を自宅に持ち帰っていた。用務員の男性にパンや牛乳を自分のカバンやあらかじめ用意した発泡スチロールの箱に詰めるよう頼んでいたといい、今年6月、市教委に告発文書が届いたことで発覚した。
給食は、同校で午後7時10分から10分間の休み時間に「補食」として配られていた。生徒約150人全員が対象で、年間216万円の給食費は全額公費負担。菓子パン1個と紙パック入り牛乳1本が無料で配られている。
ただ、昼間に働いている生徒も多く、仕事の都合で急(きゅう)遽(きょ)欠席する生徒も多いため、毎回、生徒全員分を用意しているわけではない。過去の統計に基づき、毎回、生徒数の7割程度の数を準備。しかし、あらかじめ生徒に給食が必要かどうかを確認していない見込み発注のため、どうしても1日に10〜30人分の残食が出ていたという。また、同校のルールでは食品が腐ったりするリスクもあるため衛生上の問題から生徒に持ち帰りを禁止し、余ったパンや牛乳は分別して廃棄することになっていた。
全額公費負担
処分を受けた教諭は給食指導担当で、発注量の決定権はなかったが、生徒に時間内に給食を食べさせ、持ち帰りの禁止を指導する立場だった。教員は余った牛乳やパンを持ち帰るようになった動機について「廃棄するのがもったいないと思った」「処分担当の用務員が廃棄する手間を少なくしようと思った」と市の調査に答えており、きっかけは、用務員が「毎日こんなに捨ててもったいない」と言いながら処分作業の煩雑さを嘆くのを聞いたことだったとも話しているという。
市教委が問題視したのは給食が公金で購入されたものであることだ。堺市教委事務局教職員人事課は「弁護士にも相談しました。廃棄予定とはいえ無断で持ち帰るのは『微妙だが、窃盗にあたる』とのことでした」と説明する。
さらに、教諭が毎日持ち帰る量がパン5、6個、牛乳十数本と毎日家庭で食べるには多かったことも疑問視。調査に対し教諭は「転売などはしていない。食べきれず余った分は捨てていた」と答えたという。教諭は内部告発を受け、11月、持ち帰ったパンと牛乳の実費分約31万円を市に弁済し、処分が下された25日に依願退職した。
近畿大の鈴木善充准教授(財政学)は「今回の件では、教諭が給食費を自分の食費に充てているということになる。例えば会社から備品を持ち帰るのと同じこと。窃盗や横領はいけないと教える立場の人間がこのような行為を行うことに問題がある」と指弾する。
残食を減らすためには…
また、文部科学省は学校給食衛生管理基準で「児童生徒に対してパンなどの残食の持ち帰りは衛生上の見地から禁止することが望ましい」と定めていることから市教委は「学校には給食を出す側としての責任があります。範を示すべき教員が規則を守らないのはやはりよくないと思います」と話す。
ただ、処分が報じられると、食品ロス問題の観点から「いけないことなのか」「余った食材を困っている人に回すことができなかったのか」という議論がSNS(会員制交流サイト)などでわき起こった。堺市教委にも報道発表があった25日の翌日から2日間で100件近い電話と約50通のメールが寄せられた。その大多数が教員を擁護する意見だったという。
食品ロス削減通販サイト・ロスゼロの運営などを行う「ビューティフルスマイル」(大阪市)の文美月社長も「残ったものをそのまま廃棄するのはやはりもったいない」と話す。「日本の学校給食全体の食品残(ざん)渣(さ)は約5万トンにのぼります」と指摘したうえで「本来、学校は児童生徒が食や環境についてしっかり学ぶ場です。行政と連携して残食を生み出さない仕組みに変えていくことが必要。これを機に社会全体でも給食の残食について考えていくべきです」と訴える。
市は今回の件を受け、残食を飼料や肥料として寄付することなどを検討し始めた。また、そもそも残食を出さないための方策についても検討中だが、「事前に生徒に給食の希望を聞けば、無料のためにとりあえずは注文する人数が増え、結局残食が増えるかもしれない」と頭を悩ませる。残食を抑える仕組み作りが急務になっている。
https://news.goo.ne.jp/article/sankei
/region/sankei-afr1912270027.html
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