日本襲う「南京虫の2020年問題」 トランプ大統領のリゾートも白旗か
業者による南京虫駆除の様子。虫や卵に薬剤をまくほか、すみ着いた家具や衣類を高温乾燥機にかけたり、スチームを吹き付けたり、ドライアイスで凍らせたりして駆除する(写真:日本ペストコントロール協会提供)
(AERA dot.)
国内で南京虫(トコジラミ)の被害が増えている。繁殖力が強く完全に駆除するのも容易ではなく、刺されれば激しいかゆみが襲う。旅行者により持ち込まれている可能性が高いことから、来年の東京五輪で被害拡大が懸念されている。AERA 2019年11月11日号に掲載された記事を紹介する。
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南京虫被害は今後、さらに拡大する──。害虫駆除業界では今、「2020年問題」という言葉がささやかれているという。
南京虫は旅行者やビジネス客のかばんや郵便物に潜み、長距離移動する。国立感染症研究所の冨田隆史主任研究官(63)はこう警鐘を鳴らす。
「殺虫剤抵抗性の南京虫は外国から持ち込まれたと考えられる。来年の東京五輪で海外と日本を行き来する人が増えれば、さらに虫が持ち込まれる可能性がある」
日本政府観光局によると、18年の訪日外国人は3119万人で、00年の6.5倍に増えた。東京都内の保健所や市町村に寄せられた南京虫の相談件数は、05年度に26件だったが、18年度には354件と13.6倍になっている。今年のラグビーW杯でも多数の外国人が日本を訪れており、各地の自治体が、南京虫の特徴や生息場所、対策をまとめたチラシを配布して、注意を呼び掛けている。
さらにここ5年ほどは熱帯地域に生息するネッタイトコジラミも国内で確認されている。日本国内で使える薬剤が効きにくく、さらに厄介な存在だ。
ただ、南京虫が伝染病を媒介することは確認されていない。冨田研究官は「命にかかわらないので、報告や研究が少ないのが実情」と話す。
米国で20年に開催される主要7カ国首脳会議(G7サミット)の会場を変更すると10月19日、トランプ米大統領がツイッターで明らかにした。もともと予定されていた会場は、フロリダ州マイアミにあるトランプ氏自身が所有するリゾート施設。「自らの経済的な利益のために職務権限を使っている」と批判されていた。
実はこの施設、「南京虫だらけ」とSNSでうわさが広まっていた。AFP通信によると、8月末にあったG7で、トランプ氏が次回開催地に自身のリゾートが最適とアピールすると、ツイッターで「#Trumpbedbugs(トランプトコジラミ)」が話題となり、トレンド入りした。16年に南京虫に刺されたとして宿泊客が提訴、和解した記事が拡散されたからだ。トランプ氏は「虚偽でいやらしいうわさだ」とツイッターで反発していたが、G7の会場変更には、南京虫問題も影響したとの見方がある。
小さな虫が、世界情勢もitchy(かゆい、落ち着かなく)にさせている。(ライター・井上有紀子)
※AERA 2019年11月11日号より抜粋
https://news.goo.ne.jp/article/
dot/life/dot-2019110700068.html
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