冠水油混じり「気持ち悪い」 1990年の大雨でも流出 九州北部大雨
大雨被害から一夜が明け、ボートで回収した油の吸着マットを運ぶ自衛隊員ら。右奥は冠水で孤立したままの順天堂病院=佐賀県大町町で2019年8月29日午後3時10分、森園道子撮影
(毎日新聞)
鉄工所から流出した油混じりの濁った水がのどかな農村地帯の日常の景色を変えた。九州北部を襲った記録的な大雨で広範囲にわたって冠水した佐賀県大町町。大雨から一夜明けた29日も周囲には油の臭いが漂い、水に囲まれた病院は患者らが取り残されたまま孤立状態が続く。過去の水害時にも鉄工所から油が流出したことがあり、変わり果てたわが家を前に途方に暮れる住民の姿があった。
28日の大雨で同町の佐賀鉄工所大町工場から流れ出した油は、29日になっても民家の周辺や道路を黒く染めていた。工場近くに1人で暮らす無職、森田幸子さん(71)が29日午後、避難先から自宅を確認しに戻ると、床には黒い油がこびりついていた。「1人ではどうしようもない。親族が来るのを待ってから一緒に片付けようと思う」と困り果てた。
大町工場によると、流出した油は、鉄の強度を高める工程で冷却に使う「クエンチオイル」で、流出量は約5万リットルと推定している。
工場の建屋内には八つの地下油槽があり、自動車部品のボルトを製造している。担当者によると、28日午前4時ごろ、建屋内に鉄砲水が入り込み、土のうなどを積んだが、工場内はひざ上まで浸水した。その際、24時間稼働する地下油槽にふたがないため、中の油が外に流れ出たという。
鉄工所によると、油は触れても人体に影響はないという。工場では、1990年7月に佐賀県内で各地が冠水した大雨災害でも油が流出した。工場外に流出を防ぐなどの対策はあったが、再発を防げなかった。
近くに住む男性公務員(61)は「90年も大雨で工場から油が流れ出た。また鉄工所かと思った」とため息をついた。同町の男性会社員(69)は「油は健康に影響はないかもしれないが、体に付くとせっけんで3回ほど洗わないと落ちない。家の中にも臭いが残っていて、気持ち悪い」と顔をしかめた。
同町の順天堂病院には、患者ら184人が取り残され、入院患者110人の中には人工呼吸器が必要な重症者もいる。患者らの移送は困難なため、29日は自衛隊などが支援物資や医療関係者の交代要員をボートに乗せ、油膜が浮かぶ水の上を何度も行き来していた。
国土交通省などが近くの六角川へ排水作業を続ける中、自衛隊員らは吸着マットで油の回収にあたり、鉄工所の従業員も作業にあたっていた。【浅野孝仁、青木絵美】
https://news.goo.ne.jp/article/mainichi/nation
/mainichi-20190829k0000m040307000c.html
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