入れ歯危機到来か、若い歯科技工士の労働環境過酷で離職8割
入れ歯クライシスの到来か(撮影/岩澤倫彦)
素材や価格、技術にも格差のある「入れ歯」だが、入れ歯先進国のドイツでは、高い技術をもつ歯科技工士に国家がマイスターの称号を与える。
日本人第1号となったのが、大畠一成氏(デンタルラボア・グロース代表)。歯が何本か残っている場合、大畠氏が勧める入れ歯は、ドイツ式“テレスコープクローネ”だ。
「残っている歯に冠(金属の土台)をつけて、それにぴったりと合った筒を人工歯側に組みます。そうすると茶筒缶のように、垂直方向にしか外れない入れ歯になります。外から金具が見えないし、口蓋部分もないので“取り外しの利くブリッジ”とも呼ばれています」
歯科技工士の身分が保証されているドイツと違い、日本の歯科技工士は、安い診療報酬の犠牲となっている。保険医協会のアンケートに寄せられた入れ歯作りの実態は凄まじい。
「毎日午前3時、4時まで仕事をして、30代で脳溢血で亡くなった技工士がいる」
「とんでもない低料金で、人間性を無視した納期で作らなければならない」
こうして技工士が、極端な長時間労働・低賃金に追い込まれ、入れ歯の品質自体にも影響が出ている。耐えられずに離職していく若い技工士は、8割を超えた。
このままでは、完全に技工士不足となり、入れ歯は数年待ち、もしくは作りたくても作れないという状況は避けられない。
ヨロヨロと杖をついていた高齢者が、入れ歯をつけると背筋が伸びてスタスタと歩いた、というケースは珍しくない。認知症の人が、入れ歯で劇的に改善したこともある。
このように生活全般や、命さえも左右する「入れ歯」は、歯科技工士の存在が鍵を握っていることを、ぜひ知っていただきたい。
●取材・文/岩澤倫彦(ジャーナリスト・『やってはいけない歯科治療』著者)
※週刊ポスト2018年10月5日号
NEWSポストセブン
http://news.livedoor.com/article/detail/15377136/
- 関連記事
-
- 槇原敬之容疑者逮捕の衝撃は「依存症」への恐怖 専門家に聞いた本当の恐ろしさとは (2020/02/15)
- 3年以内に新たな副作用が見つかった有名市販薬の実名リスト (2018/08/31)
- あなたは知ってた? 「週休2日」「完全週休2日」の違い (2018/03/06)
- 自殺で亡くなる曜日や時間帯 性別や年齢によって異なる傾向 (2018/10/08)
- 市販のスイッチOTC薬 処方受ける場合との価格差が大きい (2016/12/05)
- 体質と食材 赤ワイン、牛乳、コーヒーは日本人に向かない? (2020/12/29)
- 「ブルーライトが目に悪い」は本当か? (2017/03/17)
- コーヒー豆を冷蔵庫で保管したほうがいい理由 (2016/06/22)
- 飲酒前の牛乳 「乳脂肪が膜を作り胃粘膜を保護」は根拠なし (2016/11/18)
- 「自宅療養」家族も悲鳴 新型コロナ 高齢患者の介護で自身も感染 (2021/01/31)
テーマ : みんなに紹介したいこと
ジャンル : ブログ