伸び続ける双眼鏡需要、国内市場を牽引するのはジャニーズファン
ポップなカラーリングの双眼鏡
バードウォッチャーや天文ファンが双眼鏡の購買層だったのは昔の話。いまや、日本の主な購買層はジャニーズをはじめとするアイドルのファンだという。海外では、依然として“自然派”が双眼鏡需要を支えているというのに、何がその差を作り出すのか。日本の双眼鏡市場を取材した。
20~40代のアイドルファン女性が買い求める
「双眼鏡を購入するお客様の6~7割が、20代から40代のアイドルファンの女性です」と話すのは、家電量販店「ビックカメラ」有楽町店(東京都千代田区)で双眼鏡売り場を担当する庄田哲夫さんだ。
有楽町近辺に限らず、さいたま市や横浜市で大型アイドルのコンサートやミュージカルが開かれる約1週間前になると、ファンらが連日来店。店のスタッフに会場名と自分が購入した席の位置を告げて、どの双眼鏡が良いのかアドバイスを求めてくるという。
庄田さんは、ファンから「表情が見たい」のか「顔より全身の動きが見たい」のかといったニーズを聞き出して、席の位置も考えながら、適した倍率の商品を提案するのが日常になっている。
3年ほど前は、売れ筋が数千円台の比較的低価格の商品だったが、今では人気価格帯が1~2万円台に上がった。3万円以上する高価な防振双眼鏡もアイドルファンに売れているという。庄田さんは「ひいきのアイドルをよりきれいに見たい、というニーズが高まってきたのでしょう」と話す。
ポップなカラーリングの双眼鏡
光学機器メーカーのビクセンが、アイドルファンの双眼鏡需要に気づいたのは4、5年ほど前。ジャニーズファンの女性社員が「双眼鏡を買うファンが増えています」と会議で発言したのがきっかけだった。
ジャニーズのグループには、メンバーごとに「メンバーカラー」と呼ばれるイメージカラーがある。たとえば嵐の櫻井翔さんやTOKIOの長瀬智也さんには「赤」、嵐の大野智さんやTOKIOの国分太一さんには「青」といった具合だ。
双眼鏡の色といえば、質実剛健な黒のイメージだが、同社が2012年に発売した双眼鏡「アリーナHシリーズ」の赤・青・黄・緑というポップなカラーリングが、メンバーカラーと合致。その後、カラーラインナップに紫色も加えた。アイドルファン向け雑誌への広告掲載を開始したほか、ジャニーズファンからの要望を聞き取り、ジャニーズファンを意識したプロモーションを展開した。同社の防振双眼鏡は、女性の手に持ちやすいサイズ感や軽量化にこだわっており、アイドルファンの女性を意識した製品開発にも取り組んでいる。
かつて双眼鏡は、バードウォッチャーや天文ファンから常に一定の需要があり、安定はしていたが大きな成長もない商品だった。しかし、「アリーナHシリーズ」をきっかけに、同社の双眼鏡事業は5、6年前から毎年対前年度比120~130%で業績が伸び続けているという。
「観客が飛び跳ねて楽しむような激しい曲のバンドの時は売れませんが、Mr.Childrenの時は、ボーカルの櫻井和寿さんが見たい、ということでよく売れます」と同社取締役の都築泰久さん。「特に、嵐のコンサート前にはケタ違いに売上が伸びました」と上機嫌だ。
都築さんは、商品調査のためにアイドルコンサートの会場を訪れた日のことを思い出す。目に映ったのは、双眼鏡をステージに向ける多数のファンの姿だった。
「あんな光景、探鳥会以外では見たことがありませんでした」
アイドルファンが双眼鏡需要を支えているのは日本だけ
国内外で双眼鏡事業を展開するキヤノンでも事情は同じ。アイドルファン需要の拡大を受けて、5年前より出荷台数が3~5倍に増えたモデルもあるという。
同社で双眼鏡の商品企画を担当する課長の家塚賢吾さんによると、アイドルファンが双眼鏡需要を支えているのは日本だけだ。海外市場は、アウトドアで動物や風景を見たいという人々の需要が中心だという。
家塚さんは、日本と外国の背景の違いについてこう分析する。「日本では、コンサートの写真撮影が禁止されているケースが大半なのに対し、海外では写真が撮影できる国が大半のようです。写真が撮れない日本のファンは、ひいきのアイドルを自分のものにしたい時、没入感のある双眼鏡を選ぶのではないでしょうか」
(取材・文:具志堅浩二)
THE PAGE
http://news.livedoor.com/article/detail/15136512/
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