子どもに「エナジードリンク」は危険! 米スポーツ医学会が「飲ませるな」と警告
子供にエナジードリンクは危険!(depositphotos.com)
エナジードリンクの危険性については、本サイトでも過去にいくつか紹介してきた。今回、「米国スポーツ医学会(American College of Sports Medicine:ACSM)」が、また新たな声明を出したので紹介したい。
2018年2月、ACSMに発表された論文のタイトルは「Energy Drinks : A contemporary Issues Paper」、日本語にすると「エナジードリンクの現在の問題」だ。この論文では、エナジードリンクの現在のエビデンスなどを報告しているが、特に子どもに対するエナジードリンクの危険性についてまとめている。
米スポーツ医学会が「子どもに飲ませてはいけない」
論文では、オーストラリアにおける7年間の追跡研究で、運動の前にエナジードリンクを飲んだ場合、運動の後に「震え」「頻脈」「吐き気」などの症状を起こす人が一定数現れたことを報告。
さらにアメリカでは、エナジードリンクによる12年間で5103の症例のうち、死亡が1例、深刻な症状が24例、中等度の症状が527例と報告されており、そのうちの約半分が6歳未満の子どもだったという。
これらのことから米国スポーツ医学会では、「子どもにおけるエナジードリンクは悪影響が強く、深刻な症状を引き起こす可能性があるため、子どもに対してはエナジードリンクの販売を制限もしくは停止する必要がある」と述べている。
さらに「子どもが目につくような場所でのコマーシャルなどは行うべきではない」とも表明している。
もし、エナジードリンクを摂取するとしても、運動の前後では飲むべきではなく、運動におけるパフォーマンスの向上は一時的なものであり、それよりもデメリットのほうが強いことを認識すべきである。
そもそも成人を基準にした安全な量
問題点として挙げられるのは、子どもを含む多くの消費者が「エナジードリンクはエナジー(力)がみなぎるもので、健康に良いものだ」と思っている点にある。
たとえば、現在、小学生や中学生がエナジードリンクを飲んでいる光景を見るが、その安全な量は、あくまでも成人を基準に作られているため、体格の小さい子どもには危険である。
さらにエナジードリンクに含まれるカフェイン量は、子どもにとってはコーヒーに代表されるカフェイン飲料すら飲んだことがない可能性があり、その状態でエナジードリンクを飲むことにより、カフェインの効果がより強く出現する可能性がある。
エナジードリンクは、カフェイン含有量に制限がなく、さらにアメリカなどの海外メーカーが開発しているため、日本人にとって体に負担がかかりすぎる可能性があるのだ。
徹夜や夜遅くまで勉強する子が体調不良や急に興奮......
日本でも最近、子どもたちの心身の変化が報告されている。
日本体育大学の調査によると、高校生や中学生でテスト前などにエナジードリンクを飲んで徹夜をしたり、夜遅くまで勉強する子には、体調不良を訴えたり、急に興奮したりする傾向があることが報告されている。
また、埼玉医科大学の上條吉人教授は、年々カフェイン中毒で病院に搬送される人が増えてきている実態を報告しており、その原因にはエナジードリンクの多量摂取によるものもあったという。
エナジードリンクの販売量は、2007年から2017年までの10年間で10倍に増えているとされ、販売量の伸びとカフェイン中毒での事故の増加は無関係ではないだろう。
エナジードリンクは日本では清涼飲料水?
なぜこのようなことが起こるのか? 日本ではエナジードリンクは清涼飲料水に分類され、カフェイン量に法的な上限がないことである。
最近の事例を危惧してか、厚生労働省はホームページにはカフェインの過剰摂取による悪影響の注意喚起を掲載しているが、どの程度の人が実際に読んでいるかは疑問が残る。
エナジードリンクを飲むのは、もちろん本人の自由だ。しかし、その名前とは裏腹に、どのような危険性があるのかはあまり知られていない。
一般的な飲料水とは異なる栄養素で構成されていること、大量摂取は健康に害を及ぼす可能性があることを、まずは親がしっかりと理解し、親は子どもに説明する必要がある。その上で場面によって適切に選択する必要がある。
(文=三木貴弘)
三木貴弘(みき・たかひろ)
理学療法士。日本で数年勤務した後、豪・Curtin大学に留学。オーストラリアで最新の理学療法を学ぶ。2014年に帰国。現在は、医療機関(札幌市)にて理学療法士として勤務。一般の人に対して、正しい医療知識をわかりやすく伝えるために執筆活動にも力を入れている。お問い合わせ、執筆依頼はcontact.mikitaka@gmail.comまで。
HEALTH PRESS
http://news.livedoor.com/article/detail/14546595/
- 関連記事
-
- インフルだけじゃない! 人間を脅かす羽毛も危険な鳥の病 (2016/12/28)
- お隣さんの柔軟剤のニオイが辛い…「香害110番」に“通報”相次ぐ、健康被害も…メーカーも使用マナー啓発 (2017/08/25)
- 「運動会の花火」「除夜の鐘」に苦情多数で禁止拡大の不寛容 (2019/12/15)
- 増える「路上飲み」「公園飲み」、立ち飲み感覚の手軽さとマナーの問題 (2020/07/02)
- うどんそば、トーストまで……「レトロ自販機」愛しすぎた男「その時によって出てくるものが違う」 (2019/06/06)
- おならを我慢し続けているとどうなる? 人間の体のざんねんなしくみ (2019/10/26)
- 死なないがんと言われる前立腺がん だが術後の後遺症は深刻 (2018/06/06)
- スマホ自転車死亡事故 書類送検女子大生の罪はどうなるか (2018/02/25)
- 低所得者は高所得者に比べて転びやすく骨折も多い (2016/09/28)
- 葬儀でありがち!5つのNGマナー (2014/12/26)
テーマ : みんなに紹介したいこと
ジャンル : ブログ