「樹木医」に新風、地位向上狙う 木風・後藤瑞穂社長
(フジサンケイビジネスアイ)
天然記念物や街路樹などの診断・治療を手掛ける樹木医として、日々樹木のもとに“往診”する木風(こふう)の後藤瑞穂社長。「樹木は酸素を供給して地球環境を保全している。だから樹木医は人類にとって必要不可欠な仕事」という。樹木の内部を音波で測定し、破壊せずに断面図を作成して腐朽の状況を診断する機器「PICUS(ピカス)」を日本で最初に導入したほか、根に必要な水と酸素を供給して微生物を活性化させ、生育を促す土壌改良材「ブレスパイプ」を独自に作成するなど、革新的な“女性樹木医”として注目を集めている。
◆都市部ニーズ吸収
関東地方を中心に、公園や街路樹を管理する行政や神社、カフェレストランなどから依頼を受ける。例えば神奈川県鎌倉市にあるカフェテラス樹(いつき)ガーデンからは、敷地内の里山の整備を7年がかりで請け負っている。
樹木医は1991年から始まった民間資格。約2600人のうち6割が造園業者に所属している。造園業との区別が付きにくい職業だが、「造園業はデザイン重視で、樹木を生物という視点ではみていない。このため病気への治療も経験と勘で行うことが多く、枯らしてしまうこともある」という。これに対し樹木医は「生態系を理解した上で、科学的な治療に取り組む」のが特徴だ。
父親が熊本県で造園業を起業し、自らも造園に関心を持つようになった。東京の造園建設会社に就職し、長崎県佐世保市のハウステンボスや公共施設、住宅の造園設計に携わり、帰郷して父親の会社を継いだ。仕事に携わるうちに樹木の生態系への関心が増し、2001年に熊本県初の女性樹木医となった。
樹木の診断・治療をする仕事は楽しかった。しかし、思ったほどの需要がなく次第に閉塞(へいそく)感を持つようになる。
そのころ「地元には市場がない。東京でチャレンジしなさい」と父親から思いがけず声を掛けられる。「地方は自然が豊かであるがゆえに木を大事にしようとしない。しかし、都市部では樹木に希少価値があり、ニーズはある」。創業者として鋭い経営感覚からの提言だった。その声に背中を押されるように07年、東京へ拠点を移す。
◆女性の連携と育成
造園業は高い木に登ったり、重いものを持つことが多く、職人かたぎの男社会となっている。樹木医も女性は1割ほどしかいない。「きめ細かな、生活者目線での提案は女性の方がたけている。女性は樹木医に適している」という考えから「じゅもくい女子会」を立ち上げ、女性樹木医同士の連携と育成を図っている。
登場してから30年にも満たない新しい資格である樹木医は、地球環境保全の考えの浸透もあり、徐々に認知度を上げてきた。それでもいまだに「樹の医者っているの」と驚かれることがある。
「地球温暖化が進むことで、樹木医の果たす役割はますます重要になっていく」と自負する。樹の医者としての地位向上に取り組むのが目標だ。
◇
【プロフィル】後藤瑞穂
ごとう・みずほ 九州造形短大デザイン科卒。造園建設会社を経て、2001年永田造園に入社。14年1月木風を設立し、現職。49歳。熊本県出身。
◇
【会社概要】木風
▽本社=東京都江東区東雲2−7−5−605
▽創業=2002年2月
▽資本金=1000万円
▽従業員=3人
▽売上高=3000万円
▽事業内容=樹木の診断・治療、コンサルティングなど
https://news.goo.ne.jp/article/
businessi/business/bsl170821001.html
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