<軽失禁ケア>下着感覚で 機能とイメージアップの商戦熱く
かつては白一色だった軽失禁ケア商品。色のバリエーションを増やして、下着感覚をアピール=東京都中央区の花王本社で、江刺弘子撮影
(毎日新聞)
軽失禁ケア商品の市場が拡大している。2016年度の販売金額は約300億円とされ、前年比110%の伸びだ。一方で、「老いを認めたくない」「恥ずかしい」などの理由で商品の使用をためらう消費者も多い。このためメーカー各社は、パッケージに「おむつ」「尿もれ」などの言葉を避け、アクティブシニアに向け「下着」や「エチケット商品」として販売している。団塊世代が後期高齢者となる2025年を最大の商機ととらえ、独自技術の開発や認知度アップに懸命だ。【江刺弘子】
◇多彩な色展開でハードル低く
花王は今年4月、ピンクとブルーの2色展開だった「リリーフまるで下着 カラーパンツ」にラベンダーとアイボリーを加えた。色のバリエーションを増やして下着を選ぶのと同様の感じを演出して、「ハードルを超えるきっかけにしてもらいたい」とする。14、15年にカラーや柄もの企画品を販売したところ、「見た目がいい」「どこで売っているのか」など予想以上の問い合わせがあったことから、今回の4色展開につながった。
同社は「紙で吸水できる下着」はリピート率が高いとして、軽失禁商品の中でもパンツ型の「リリーフまるで下着」に特に力を入れている。一般的な商品は、糸ゴムで収縮機能を実現しているので、表面が波打っていかにも“おむつ”のようにみえる。そこで、生地自体が伸び縮みする素材を10年かけて開発し、なめらかな表面のパンツを実現した。薄さ3.5ミリで色がついているので、商品名のとおり「まるで下着」だ。
軽失禁に悩むと、通常は尿量が増えるにつれてライナー、パッド、パンツと使用する種類も変えるのが一般的だ。しかし同社は、カラー化をきっかけに「頻繁に取り換える手間が省ける」など使い勝手のよさも評価してパンツに切り替えたり、何も対処をしていなかった人がいきなりパンツを使用したりしたケースがモニター調査などで見られたという。パンツのカラー化は、新しい顧客を獲得する決め手になったようだ。
◇吸水機能に抗菌・防臭の付加価値
「市場に軽失禁という新たなカテゴリーを生み出した」。こう自負しているのは日本製紙クレシアだ。1994年に日本で初めてナプキンタイプの吸水ケア専用品「ポイズパッド」を発表した。以降、販売額は毎年2ケタ伸長という。
同社は、ライナーとパッドの強化に注力する。ライナーは軽失禁商品の入り口と位置づけ、吸水量が3ccから15ccまで4種類ある。一方、パッドは吸水量が60ccから230ccまで5種類あり、計9種類を展開している。ただ「商品の吸水機能は当たり前で、いかに付加価値をつけるか」がカギになってきたという。
そこで着目したのが「抗菌・防臭」機能だ。07年に抗菌・消臭シートを採用し、この分野の研究を進めた。16年にグループ会社の日本製紙が開発した超極細繊維に、抗菌・消臭効果のある金属イオンを付与した「機能性セルロースナノファイバー」を世界で初めて実用化した。においの原因となる雑菌の増殖を防ぎ、おりものなどのたんぱく質のにおいも無臭化する効果があるという。十分な吸水量がありながら薄型で、さらに抗菌・消臭という機能を加えて商品力を高めた。「臭わないでほしい」という潜在的なニーズに応えたかたちだ。
◇男性用も積極PR 日本初「便」商品も
一方、男性の尿漏れに積極的に対応しているのはユニ・チャームだ。同社の調べでは、尿もれの経験者は女性は40歳で3人に1人、男性は50歳で3人に1人なので、商品も女性用が主流を占めてきた。しかし、男性の尿もれの対策として、今春まで用を足したあと尿道に残った尿が少し出てしまう「おっかけモレ」 (排尿後尿滴下)をCMで明るく描き、「尿もれはだれでも起こる」と安心感を伝えた。
同社は14年9月に初めて男性用の失禁ケア商品を発売し、市場規模は8倍に拡大した。この分野のシェアは約7割という。「それまで生理用品など代替品でケアしていた層が、一気に流れ込んだ」としている。今後は、あせふきシートを使うように、男性用の失禁ケア商品はエチケットとして利用されていくのではないかと期待を寄せる。
また同社は「便もれ」市場も開拓した。今年5月に、日本で初めて軽い便失禁をケアする「ライフリー さわやか 軽い便モレパッド」を発売。同社の調査で成人の5人に1人が軽い便もれを経験しており、何も対処していない人が52.6%にのぼっていた。また47%が何らかの対処をしているものの、ティッシュやパンティーライナーなど女性の生理用品、尿失禁商品などを代用する人がほとんどだった。
新商品は、厚さ3ミリ、直径13センチの円形で手のひらに乗るサイズ。におい成分に反応する便臭吸着ポリマーを配合し、便臭の成分となるアンモニアや酢酸、インドールに対して消臭効果を発揮するという。
◇健康寿命を延ばす一助に
厚生労働省の13年のまとめによると、尿失禁の経験者は約153万人で、このうち65歳以上は121万人と全体の約8割を占めている。尿もれやその不安が、外出やスポーツなど積極的な活動を阻害する要因の一つとなり、健康寿命を縮めることにつながることが懸念されている。ユニ・チャームの調査でも、60〜70代の4人に1人が尿もれによって、週に5日以上外に出ていないとの結果が出ており、「少しケアすることで、健康寿命を延ばすサポートになる」とする。
一方で、メーカー各社の調査から、「介護のイメージある」や「加齢を感じさせる」などの理由で、軽失禁に悩む人の半数が専用商品を使わず、対処しないままで、生理用品などの代替品でまかなっていることがわかっている。
特に多いのが生理用品の代用だ。しかし、日本製紙クレシアによると、経血と尿では成分が異なり、生理用品は経血をパッドの皿部分が受け止めるが、失禁用品は尿をゼリー状にかためて逆戻りしない工夫をしている。このため、「生理用パッドで40CCの水を含ませると、パッドがしぼれるぐらいにびしょびしょになる」(同社)。専用品を使った方がいいのは明らかで、生理用品で代用している層の取り組みが課題となっている。
軽失禁ケア商品のPRには、「アクティブ」「ヘルスケア」など積極的な言葉が並ぶ。パッケージもピンクに花柄を採用するなど明るい色や柄が目立つ。介護用品との差別化についても「数ある下着の中の一種類ととらえて」と各社ともアピールしており、「軽失禁商品も大人用下着からスタイルケアの時代へ」とユニ・チャームの担当者は話している。花王は、団塊の世代が後期高齢者になる2025〜30年には、当たり前に利用されるようになり、より身近でより高機能な特徴を備えた商品がそろっているのではと予想している。
https://news.goo.ne.jp/article/mainichi/business
/mainichi-20170610k0000m020036000c.html
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