<水道事業>「水はただじゃない!」水ビジネス、海外に活路
台所の二つの蛇口を開き「いつでも質の良い水を使えるようになった」と話すウミャさん=ヤンゴン市内で2017年3月6日、吉川雄策撮影
(毎日新聞)
◇福岡市、地元企業の進出狙い
海外で水道事業に取り組む自治体が増えている。インフラ整備に併せて地元企業の進出を後押しする狙いもあり、自治体間の競争も激しさを増す。ミャンマー最大都市のヤンゴン市で事業拡大をうかがう福岡市の事例を取材した。【吉川雄策】
「ごみも混ざらない水が24時間出る。うれしいね」。ヤンゴン市郊外の一軒家に住むウミャさん(72)が台所の水道から激しく出る水を自慢げに指さした。漏水などもあって以前は雨水をためて使っていたという。
一帯の約300世帯は「松岡プロジェクト」と呼ばれるモデル地域だ。福岡市水道局から2012〜15年に国際協力機構(JICA)に派遣された松岡賢さん(38)らが水道事業の改善に取り組んだ結果、水道管の漏水が減少し、4世帯に1世帯しか払っていなかった水道料金の収納率も85%に上昇した。
経済成長著しいヤンゴン市内では、11年に1日61万立方メートルだった水需要量が、40年には224万立方メートルに増えると見込まれている。福岡市は松岡さんの後任をJICAに派遣して引き続き水道改善に取り組む一方、今年2月からは別の職員を直接ヤンゴン市役所に派遣し、新たに下水道やごみ処理の整備計画作りも担う。将来、浄水場の建設や下水管路の整備で、福岡の企業を売り込む狙いだ。
昨年12月には日本の自治体で初となるヤンゴン市との姉妹都市協定も実現した。同様に協定締結を狙っていた関西地方のある自治体よりも名乗りを上げるのが遅かったが、過去の協力実績を強調するなどして巻き返した。
姉妹都市協定は従来、文化面の交流が中心だったが、近年はビジネス面での関係強化にも広がりつつある。福岡市の担当者は「協定締結で他市より優位な立場に立てた。地元企業の海外展開を後押しし、最終的には市税収入の増加につなげたい」と期待する。
◇福岡・北九州市が水事業を展開する自治体がある国
福岡市 ミャンマー、フィジー(予定)
北九州市 カンボジア、ベトナム、インドネシア、中国、ミャンマー
◇先行の北九州市 地場企業中心に150社が参加
海外でいち早く「水ビジネス」を手掛けたのが北九州市だ。1999年にカンボジアの首都プノンペンで水質改善や人材育成を始め、ベトナムやインドネシアなどにも広げた。2010年に設立した官民連携組織「北九州市海外水ビジネス推進協議会」には地場企業を中心に約150社が参加し、これまでに50件37億円分の仕事を受注。うち数億円が税金として市に入った。
水道管の工事情報などを管理する同市の地理情報システム開発会社「ジオクラフト」は、ベトナムとカンボジアの事業に加わった。石原均社長は「水道事業は国内外の激しい争いになっており、官民がタッグを組む意義は大きい」と話す。
福岡市も14年、同様の官民組織「国際ビジネス展開プラットフォーム」を設立し、地場企業35社を含む77社が参加する。市は今年9月、海外2カ国目として、JICAがフィジーで取り組む水道改善事業に加わる予定だ。
海外での水道事業には東京都や大阪市などの大規模自治体が続々と参入している。早稲田大ビジネススクールの長沢伸也教授(環境ビジネス)は「少子高齢化やインフラの老朽化などで国内の水道事業の収支が苦しくなっている」と背景を説明。その上で「このままだと過当競争に陥る可能性があり、水道整備を求める海外側と日本の自治体側の意向などを調整する組織が必要だ」と指摘する。
https://news.goo.ne.jp/article/mainichi/business
/mainichi-20170513k0000e020280000c.html
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