何杯飲めばいい? 飲むタイミングは? コーヒーVS.緑茶
いれ方、飲み方はいろいろ
(dot.)
日本人が好む飲み物の代表格であるコーヒーと緑茶。2015年の国内でのコーヒーの消費量は約46万トン、緑茶の消費量は約8万トンだ。1日にどちらかを必ず飲んでいる人は多いのでは。この2大嗜好飲料は健康にもいいと、ニュースにもなっている。いったいどれだけ飲めばいいのだろうか。
まずは国立がん研究センターの「多目的コホート研究」を見てみよう。この研究では長期観察型の疫学調査を行い、これまでに約14万人を追跡している。
「1990年から調査を続けていて、5年に1回、生活習慣に関するアンケートをとっています。開始時から追跡してデータを蓄積しているので、たとえば病気になった人が20年前にどんな生活をしていたのかがわかるというのがコホート研究です」(同センター社会と健康研究センター疫学研究部室長・澤田典絵氏)
直近のコーヒーと緑茶に関わる調査では、「コーヒーを1日に3杯以上飲む人は脳腫瘍(しゅよう)のリスクが低下する」という結果が出た。
一方で、緑茶をよく飲む人には同様の結果は見られなかったという。
なぜだろうか。東京大学医学系研究科特任助教の齋藤英子氏は言う。
「コーヒーに含まれているクロロゲン酸という抗酸化物質が作用しているのではないかと考えられます。クロロゲン酸はほかにも血糖値の改善や血圧を適切にする効果があると言われています」
では、がぶがぶとコーヒーを飲めば脳腫瘍リスクはぐんぐん減るのか。どうやらそうでもないようだ。澤田氏は言う。
「脳腫瘍に関して言えば答えは出ていないです。海外ではコーヒーを7杯以上飲むとリスクが上昇するという報告もあるんです」
センターでは、日本人の主要死因であるがん、心疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患と、大きなくくりでの全死亡リスクも調査している。それによれば、1日にコーヒーを3〜4杯飲む人はまったく飲まない人に比べて24%低いという。やはり量をたくさん飲めばいいのかと希望を持ちたくなるが……。
「1日4杯の人まではリスクが下がっているのですが、5杯以上の人になると結果がぼやけているんです。まったく飲まない人と5杯以上飲む人で効果に差はないように見えます」(齋藤氏)
とはいえ、無類のコーヒー好きでも1日に5杯以上飲む人はなかなかいない、と語るのは全日本コーヒー協会専務理事の西野豊秀氏だ。もちろんコーヒーミルで豆をひいていれるコーヒー党だが、それでも毎日4〜5杯だという。
「午前中に2杯、昼に1杯、午後に1〜2杯です。あくまでも嗜好品ですから、健康のためと言って義務的に飲むことはやめてほしいですね。エナジードリンクなどに含まれるカフェインの過剰摂取でアメリカや日本でも死者が出ています」
コーヒーといえば、カフェイン効果を期待して眠気覚ましに飲むという人も多いだろう。その際の注意点はあるのだろうか。
「カフェインの錠剤を併用したり、極端な量を飲んだりというのでなければ問題ないです。140ミリリットルのカップ1杯で約80ミリグラムのカフェインが入っているのですが、カフェイン摂取にうるさいヨーロッパでは、1日400ミリグラムに抑えましょうと言われています。これは単純計算でも5杯以上。やはり飲みすぎはよくないですね」(西野氏)
対して、緑茶はどうだろうか。前述どおり、脳腫瘍に関する調査では緑茶を飲む人にリスクの低下は見られなかった。
「ただ、主要死因による全死亡リスクの調査では、緑茶を飲めば飲むほどきれいにリスクが下がっているんです。これはコーヒーとは異なる点です」(齋藤氏)
緑茶については、1日1杯未満から5杯以上までの調査で、男女ともに摂取量が増えるにつれリスクが低下しているが、特に脳卒中との関連性に注目したい。
「データを見ると、1日に4杯以上飲む人には脳卒中や脳梗塞、脳出血に対して有効に働いています」(澤田氏)
飲めば飲むほど効果抜群!とも言えそうな緑茶だが、飲みすぎることで弊害はないのか。大妻女子大学「お茶大学」校長で農学博士の大森正司氏に聞いた。
「飲みすぎて悪いということはないです。嗜好品として飲む形であれば、飲みたいだけ飲んでください。ただし、実際にはものすごく飲む人でも5杯から10杯。現実的な量で、ということです」
また大森氏によれば、緑茶に含まれているカテキンは、がんの抑制や認知症予防にも効果があるとされているという。
「がん細胞を植え付けたネズミによる実験で、緑茶を飲ませたほうが発がんしなかったんです。加齢による衰えを調べるために迷路の出口に餌を置いた実験では、飲ませていないネズミは出口まで来られなかったんですが、飲ませたほうはちゃんとたどり着くといった結果が出ています」
カテキンにはコーヒーに含まれるクロロゲン酸と同様に抗酸化作用があるため、体によいとされる。バランスのいい摂取方法はあるのだろうか。
「体に吸収されるカテキンの量は飲んだ量の約100分の1です。ですので一気に大量の茶を飲むのではなく、1日に何度もこまめに飲めば、成分を効率よく吸収できます」(大森氏)
緑茶のいれ方にもコツがあると大森氏は力説する。
「お湯の温度によって成分のバランスが変わってくるんです。カフェインは熱湯でしか溶け出しませんが、カテキンはぬるま湯でも溶けます。ですので、カフェインを抑えてカテキンをとりたければ50度ぐらいのぬるま湯でいれるのがいいです。味も温度によって変わりますから、なんでもかんでも熱いお茶というのではなく、おいしいいれ方を探してほしいですね」
コーヒーと緑茶。どちらも共通して言えるのは「1日にほどよい量」を「好んで飲む」のが肝要なようだ。澤田氏は言う。
「私たちのデータは無理やり飲むことをおすすめするものではないです。飲んでいればよい効果があると言えますが、人それぞれの適量があると思いますし、普通に飲んでいただくのなら害はないと言えますね」
※週刊朝日 2017月4月21日号
https://news.goo.ne.jp/article/
dot/life/dot-2017041300012.html
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