日本の製薬会社が抱えている「2020年問題」とは?
新薬高騰による医療財政の破綻なども危惧されている昨今の日本。なんでも国内の製薬会社もまた没落の苦境に立たされているという。
国内ドル箱新薬の特許が切れる
2007年度のデータでは世界の売り上げ10億ドル以上の製品のうち、15品目が日本国内の製薬会社の開発による新薬という好調ぶりを見せていた。しかし、それら世界の売り上げ上位の薬の特許期間が、2016~2020年に立て続けに切れることで、ジェネリック薬品が市場に出回ることになるのだ。
「海外で開発された薬で10億ドル以上の売上を誇っている薬は、ほとんどが抗体医薬品と呼ばれる特殊な製法で作られた単価が高い薬ばかりです。この数年内に特許期間が切れる国内製薬会社の稼ぎ頭とも言える薬は、それに比べると単価の安く、需要の高い(患者数の多い)薬で、統合失調症やうつ病で処方されるエビリファイ、高血圧患者に処方されるオルメテック、頻尿治療薬のベシケアといった薬が名を連ねています」(30代・製薬業界関係者)
http://nikkan-spa.jp/1163618
日本の患者の“安かろう悪かろう神話”にスキあり
しかし、いくら海外のジェネリック薬品が出たとしても、実際に国内の製薬会社の売上が大きく落ち込むことなどあり得るのだろうか?
「ジェネリック薬品の普及率は数量ベースで日本は40~50%程度、欧米では70%を超えています。この差の理由は、欧米は政策として医療費抑制のためにジェネリック薬品を推奨しているから。アメリカでは民間保険の制度上ジェネリック薬品が普及しやすいんです。
国民皆保険制度を維持している日本は、薬が高価だとしても平等な医療を受けることができる。また、患者側の“安かろう悪かろう神話”がいまだ根強いこともあり、なかなか普及していない。それだけ海外の企業にとっては、日本は高価な新薬を気前よく消費してくれる“オイシイ市場”なわけですが」(同)
このように日本の製薬市場では先発品が安価なジェネリック薬品に駆逐されるのに十分な状況があることに加え、欧米などの製薬会社は自社開発の新薬をジェネリック薬品事業でも展開し、最後まで収益をきっちり回収する体制も万全。
いっぽう、国内では某有名ジェネリックメーカーですら2017年にやっと海外の市場開拓を始めるという段階。海外の市場に日本企業が入り込む余地はないかもしれない。バイオ分野開発の遅れを懸念する声も
また、従来の製法による新薬開発はすでに出尽くした感があり、世界的にバイオ技術による製薬の研究開発へ舵を切りつつあるという指摘も多い。
「欧米諸国だと新しい医薬品開発を専門にするベンチャー企業も多く、大学や研究期間とも密接な連携が取れています。基礎研究や開発費を比較すると日本企業が出遅れている感は否めないですね。それに関しては影響力の強い医師会と製薬会社との癒着も一因でしょう。日本で最もバイオ薬品に強かった某製薬企業も外資系企業に事実上、買収されてしまいましたから」(同)
国内製薬会社が今後生き残っていくためには、ジェネリック薬品事業・バイオ分野での新薬開発へ大きくシフトチェンジを図る必要があるようだ。<取材・文/日刊SPA!取材班>
http://nikkan-spa.jp/1163618/2
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